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DATE: CATEGORY:あかりの思い出
ラジオが9時の時報を告げると就寝準備をします。

「おねんねの時間だよ。でんち持って茶の間に行こう。」

「はい。」

入口でスライドを下まで戻して消灯させました。親指と人差し指を尖らせ、ボタンをギューッと押したままにして、やわらかい感触を楽しんでいました。親指をパッと離すとパチンと音がして、指を広げてボタンの高さを測って楽しんでいました。卓袱台に灯りを置きました。仏壇に代わる代わる「おやすみなさい。」のお祈りをしました。手分けして卓袱台とテーブルを折りたたみそれぞれの部屋の隅に片付けました。母は、灯明を消し、仏壇の扉を閉めました。祖母は、夏でも、湯沸かしと祖々母のたばこ着火用に使っていた火鉢の炭を消し壺に入れました。

「おいで。台所に電灯戻すよ。でんち持ってきてね。」

「はい。」

母は、裸電球を点灯させたまま台所に戻しました。長い布巻線が脳裏に焼き付いています。

「茶の間まで照らして。」

「はい。」

裸電球をお勝手に戻すと、あたりは闇に包まれました。祖母は、N-9を点灯させて、押入れから布団を取り出していました。私は、スライドを真ん中まで上げ、親指でボタンを押し続けて人差し指とともにしっかり止めていました。二筋の光源は、大切な拠所になっていました。
父は「この家は暗がりが多いから、おばけが出るぞ。」とおどかしました。母は、「おじさんとおばさんといっしょに、子どもの頃、机の上にあるランプも磨いてあちこちで使ったんだよ。だから、懐中電灯ってだいじだよ。」と言いました。その言葉の重みが、今になってよく理解出来ています。
押し入れを開け、敷き布団、敷布、掛け布団、枕を総出で出しました。常時点灯にポジションを変えると、ボタンを押し離しして遊んでいました。最後に蚊帳を出しました。もう1つの部屋が出来るようで、わくわくしていました。
次に、昼間と同じく、井戸水を手洗い水タンクと手水鉢に入れます。母といっしょに台所に行き、水瓶を照らしました。水タンクの上蓋を開け、ひしゃくで水を入れました。机の部屋と茶の間を通り、運びました。もう一度台所に戻り、ひしゃくで洗面器に水を入れ、手水鉢に運びました。
手洗いのために、トイレ側の引き戸だけは開けておきました。それ以外の引き戸と雨戸を閉めました。雨戸を閉めると、独特のひだが浮き出て見えました。手元を照らしたり、広範囲を照らしたり、腕を前後させながら焦点距離を変えるのが難しいと思いました。
暑くて寝苦しい真夏の夜です。蚊帳に入ると、母は私を抱っこして、うちわで扇いでくれました。その手元もずっと照らしていました。
考えてみると、かなりの時間N-35を握っていました。小さな手のひらで、重い胴体をよく握りしめていたと思っています。そそり立つ四角いボタンがとても気に入っていたので、親指と人差し指でずーっと弄んでいました。
昼間、ちびってしまって母に叱られていたので、とても懲りていました。就寝前には、母に連れ添われて、便意を感じなくても、必ずおトイレに行くようにしていました。大も小も、女子用のトイレで済ませていた私でしたが、男子用の便器で小便が出来るように覚えていきました。2歳半の子どもにとっては、便器の背が高いので、母に抱きかかえてもらいながら、チャックを下げて出来るようにしていきました。
女子用の便器は、唐津焼か伊万里焼の中国風の模様の陶器でした。木製のふたを取って使いました。跨座口が広く、落ちたら危険なのでいちばん小のときは、端に立って体を押さえてもらいました。大のときは、端におしりを向けてしゃがみ、押さえてもらいながら使っていました。就寝後は、母がおトイレに行く際は、必ず起こしてもらっていました。

「ほら、起きて。シーシーしてこようね。」

母は、親指と人差し指でボタンをパチンパチンと音をせて、光をフラッシュさせました。

「はーい。」

「でんちにぎにぎして。」

寝ぼけ眼で胴体を受け取ると、ボタンをギューッと挟み、長押しして床の間の戸を開けました。

「はい。」

「こっちは、おばあちゃんが寝ているから、照らしちゃだめだよ。」

「はい。」

小声でおしゃべりしながら、常時点灯に切り替え、ボタンを親指と人差し指でパチンパチンと弾いて長い廊下に出ました。

「こっちでシーシーしてみようか。」

「はい。」

「あそこをしっかりを照らして。シーシーしてごらん。」

「はい。」

男子便所に初挑戦です。筒先を素早く素焼き便器の真ん中に向けました。ライオンつきのリベットが浮き出るように照らし出されました。

「いっぱい出ているね。」

「うーん。」

「もう、終わった?」

「はい。」

「戸を開けるからここを照らして。」

「はい。ボタン、やわらかいからずーっとおいたしていたよ。」

筒先を木戸の取っ手に向けました。

「そうだね。消えなくてよかったね。今度はお母さんの番。シーシーするからでんち貸して。ここで待っていてね。」

「はい。」

常時点灯にしたまま、母に手渡しました。

母が用足しを終え木戸を開けて出てくると、闇の静寂が破られました。

「手洗いを照らして。」

「はい。」

母が先に手を洗うので、あかりを受け取り手元を照らしました。交代して、私が照らしてもらって手を洗いました。

廊下を歩くときは、再び、私が灯りを握りしめ、ボタンで遊びながら照らし、蚊帳に戻りました。

朝は、柱時計が6時を打つと、規則正しく起きることになっていました。雨戸を開けるまで暗いので、私が照らし役をしていました。すべての引き戸を開けると、椅子を使ってN-9とN-35をかもいのフックにかけるのが私の役目でした。
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