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DATE: CATEGORY:あかりの思い出
九万九千日(くまんくせんにち)は、お盆の入りのお祭りでした。子どもの頃、とても良い響きの言葉だと思っていました。書物やインターネットで調べたところ、これは8月11日を中心に行われる観音様特有のお祭りだそうです。

遠くから三階節の音が聞こえてくると、お出かけの合図でした。

「九万九千日のお祭りが始まったね。行ってみる。」

「遠いの?」

「坂があってたいへんだけれど、暗いところに来たら点ける、明るいところに来たら消すって出来たでしょう。大丈夫。」

「じゃぁ、行ってみる。」

「用意して。」

「はい。」

「電信柱が目印だったね。」

「うん。」

「そこまでしっかりにぎにぎして点けてね。」

「はい。(カチッ、ポン)点いた。」

「さぁ、行くよ。しっかり照らしてね。」

「はい。」

親指と人差し指でボタンをギューッと挟んで、押し込んでいました。緊張しながら、ボタンの戻りを止めていました。

「長く点けるときは、もう1つ上げていいからね。」

「はい。」

(しばらくして)

「最初の柱だよ。」

「消すね。」

(パチン、カチッ)

(しばらくして)

「暗くなったよ。照らして。(カチッ、ギューッ、カチッ、ギューッ)バス停からこの先登ってきたね。」

「ここだ。わかった。ほら、もう1つ上げたよ。そろそろ次の電信柱だ。」

「こんなふうに、明るい所に来たら、消してね。」

「はい。ここを左に行くとお城の公園だ。」

「そう。この先、右に下りるんだよ。さぁ、石段照らして。」

「わかった。指先でボタンのわきを囲んで・・・。次の電信柱は、お医者さんの前だ。」

「そうだね。」

「お医者さんの前に来た。消すよ。(カチッギュッ、カチッギュッ、パチン)あそこで踊りやっているんだ。

灯りが見える。」

「そうだね。あとで、あそこへ行くよ。今は、右の坂を上がって観音様に行くよ。」

「だんだん、慣れてきた。もう少しだ。」

「そう、石段上がるところまで。行くよ。」

「はい。」

(仁王様の前で)

「もう、明るいから、消していいよ。」

「はい。ああ、お店がいっぱいあって混んでいる。」

「石段上まで登って、のんのんしようね。」

こうして、お参りを終えると、私は、母にセルロイド製のハッカのパイプをねだり、買ってもらいました。
金魚すくいにも興じました。

「おもしろかった。」

「いっぱい人がいたね。お店がたくさんあった。」

「また、点けて。」

「わかった。」

石段と坂を下り、海岸端の踊りの会場に行きました。この時期になると、過疎の町は里帰りの人でいっぱいになり、母は、同級生に会うのを楽しみにしていたようです。私はいろいろな人に挨拶しました。

しばらくして、踊りの会場を後にし、今度は、城跡の下の石畳コースを歩き、帰宅です。

「ここから先は、きのう来たよね。」

「わかる。」

明るい場所が山廻りより多くて、ホッとしていました。

「ほら、しっかり点けなさい。」

お城の入口から家までずっと照らし続けました。

戻ると、土間で、N-35を丁寧に拭き、自らの手足もきちんと拭き、うがいをしました。終わると、買ってもらったハッカパイプを得意そうにくわえ、祖母に観音様の様子を話しました。
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